【全教談話】緊急事態宣言の拡大をうけて
【談話】新型コロナウイルスの感染拡大にともなう緊急事態宣言の全国への拡大をうけて
なによりも子どもたちのいのちと健康を守るための施策と、ゆきとどいた教育の実現を求める
2020年4月22日
全日本教職員組合
書記長 檀原毅也
地球規模での新型コロナウイルスの感染拡大が、日を追うごとに深刻さを増しています。なによりも重要なことは、国民のいのちとくらしを守り、感染の拡大を収束させることです。検査体制と医療体制の早急な整備が求められます。そのために、政府が抜本的に財政支援を強めることを求めるものです。
4月7日、安倍首相は7都府県を対象に、5月6日までと期限を区切った緊急事態宣言をし、さらに4月16日には対象地域を全国に拡大しました。都道府県知事による外出の自粛や商業施設の使用制限の要請・指示などがおこなわれています。その際、要請・指示の内容と理由・目的について、十分な説明をおこない、国民の納得と理解を得ることは不可欠であり、政府・自治体からの正確な情報提供および情報開示が求められます。同時に重要なことは、自粛等により国民がうける経済的損失に、国が責任をもって十分な補償をすることです。労働者の賃金と雇用を維持するために、思い切った財政出動が求められます。それがなければ、感染の拡大を防ぐことはできず、いのちとくらしを守ることも教育を受ける権利を保障することもできません。休業した保護者への補償や就修学支援の拡充なども含め、制度の周知徹底、申請の簡素化、すみやかな交付など実効ある補償が求められています。
新型コロナウイルスの感染が拡大するもとで、子どもたちのいのちと健康をなによりも重視して、子どもの成長と発達を保障するとりくみが求められます。
4月15日の国連児童基金(ユニセフ)の報告によれば、いま、188か国で学校が閉鎖され、約15億人の子どもが通学できなくなっています。ユニセフは「もっとも弱い立場に置かれた子どものいのちを守るための行動指針」として「子どもの健康を保つ」「子どもたちの継続した学びを支援する」「子どものいる家庭を支援する」「暴力、搾取、虐待から子どもを守る」などを掲げています。日本でも、新型コロナウイルスへの対応において憲法と子どもの権利条約にもとづいて、子どもの最善の利益を保障することが求められます。
2月末の安倍首相による突然の一斉休校要請から、2か月以上にわたり休校となっている地域が多くなっています。今後、休校する学校がさらに増えるとともに、当面の期限とされる5月6日以降も学校再開までに時間がかかることも想定されます。休校措置により子どもの様子が把握しにくくなっているもとで、困難を抱える子どもたちの栄養不足や虐待等も心配されます。子どもの心のケア、居場所づくりなどについて、学校と関係機関が連携し、子どもを守るとりくみが求められます。
休校期間が長期化するなか、オンラインによる学習活動の推進を求める声も強くなっていますが、ICTの活用にあたっては、子どもの健康や発達段階への配慮や共同の学びを重視するとともに、前提として情報リテラシー教育の充実が必要です。また、ICT環境が整っていない学校・家庭がある現状においては、教育格差をつくらないための条件整備も重要な課題です。現場に教材作成の負担や画一的な教材の押しつけを招くようなことはあってはなりません。
子どもたちの学ぶ権利を保障するために、各学校で教職員の専門性を発揮し、子どもたちと地域の実態をふまえ、教職員集団が議論し、教育課程を編成することが求められています。学校現場では子どもたちの実態をふまえたていねいな教材づくりがおこなわれています。授業時数を機械的に確保するために夏休みの短縮や土曜授業などをすることで、子どもたちに過度な負担を強いるのではなく、子どもたちが安心して学校生活を送ることができる学校づくりが求められます。文科省・教育委員会には、現場の教職員の創造的なとりくみを支える施策を強く求めます。
今回の緊急事態宣言に際して、一部の議員が憲法に緊急事態条項を書き込む必要性に言及し、安倍首相が「憲法審査会での議論を期待する」と応じたことは到底容認できるものではありません。新型コロナウイルス問題を改憲に利用しようとする動きを許してはなりません。この間、明らかになったのは、「今だけ、金だけ、自分だけ」の長期的展望を欠く新自由主義的な政策が、人々のいのちを守るという最も基本的な政治の目的から、いかにかけ離れたものであるかということです。新型コロナウイルス問題を画期として、政策の大きな転換が求められています。
新型コロナウイルス問題を乗り越えるためには、社会的・国際的な連帯が重要であり、差別や分断は最も有害なものです。労働組合運動・教職員組合運動がますます重要になっているもとで、全教は子どもと教職員のいのちと健康を守り、ゆきとどいた教育を実現することに全力でとりくむ決意です。