市教委に「新研修制度」に向けて要望書提出

命令と処分ではなく、主体性、自律性に基づく研修の保障を

枚方教組は3月17日に市教委に対して免許更新制廃止後の新たな研修制度実施に向けての要望書を提出しました。(要望書は別掲)

 研修履歴の記録や、研修成果をレポート、テストなどで検証することも例示されるなど、教職員への負担が大きく、さらに上から示された指標、目標に基づく研修内容の受講を求められたり、さらなる研修受講を「勧奨」されます。

 とりわけ文科省の指針では、研修の水準が不十分と認められる場合に「職務命令」で研修を受講させることも可能で、さらにこれに従わない場合には「処分」もありうることなどを示しています。

 枚方教組はあくまで、教員の研修は主体性、自律性にもとづいておこなうべきであり、「命令」や「処分」を背景にした市教委・管理職の対応にならないような運用とすべきことを強く要望しました。

教育委員会連絡会も要望 「主体的、自律的なまなびが阻害されるおそれ」

テキスト ボックス: 全国都道府県教育委員会連合会・要望書から
○成果の確認方法としてテストの実施やレポート・実践報告書の作成などが例示として挙 げられているが、こうした形で成果確認を厳格化し、また管理的な側面が強くなると、かえって教師の主体的かつ自律的な学びが阻害される おそれもあることから、その表現や手法について一層の工夫を図ること

この点については全国都道府県教育委員会連合会も文部科学省へ新研修制度について要望書を提出、主体性、自律性の確保について懸念を表明しています。

建前では自主性、自律的学びが重要と言いながら、上から学ぶべき内容項目を並べ、研修履歴でどの項目をどれほど受講しているかチェックされ、さらなる研修受講を勧奨されます。

このようなチェックや勧奨が、命令、処分を後ろ盾にした「対話」で行われるなら、教職員の主体性や自律性が阻害されるのではないかと、誰もが懸念するところです。

文科省研究者20年前の警鐘!! 日本の優れた教員文化にこそ学ぶべき

「青い鳥は日本にいた──再発見される日本の教育の強み─」

(2005年ベネッセ機関紙、千々布敏弥・国立教育政策研究所の寄稿)

 文科省の研究機関で昨今の「主体的で対話的な学び」を広める中心となってきた千々布敏弥氏は、20年近く前に日本の教員研修のあり方を変えなければとアメリカで諸外国の研究調査に取り組む中で、逆にいかに日本の教員の自主的研修文化が世界的にも優れており、それこそ生徒主体の授業づくりにはるか以前から取り組んでいることを知らされ、その内容を紹介しています。

■アメリカと違い、日本の教員の多くは「良い授業をしたい」と研修に積極的で、自費で高額の民間研修を受講する教師は数多い」

■日・独・米の授業をビデオで比較・分析すると、生徒主体の活動が米9%、独19%に対して日本は40%と子どもに考えさせるスタイルが中心となっている。

■ナゼ日本の教員は高度な授業技術を身につけているか?その回答は教員同士が自主的に研究授業に校内で取り組み、互いに教材や授業方法を公開、同僚の教員同士で批評・研究し合っていることにある

 かつては、教員が、自費で様々な民間研究団体・サークルに所属して活動、研究や交流をしたり、時々に開

催される学習会などに参加して、優れた教材や授業方法を取り入れ、授業での実践で手応えを感じてさら

に自主的な研究活動に参加していこうとすることは珍しくありませんでした。

 すでに懸念されていた「多忙化の弊害」「上からの研修の強まり」

 しかし、すでにこの時点で千々布氏は「日本では学校で自主的に授業研究、教材研究に取り組んでも正当に評価されないうえに、(市教委などの)研修が軽減されることはなく、多忙化の中で、授業研究の時間が真っ先に削れている」ことを懸念しています。

■ 「教育委員会への提出書類や校内の事務作業の遅れはすぐに指摘を受けるのに対し、授業の準備に手を抜いても子どもには分かりにくい。勉強よりも目の前の課題に対応することに追われる教師が増えている」

■ 「多忙感を訴える教師に自発的に授業研究に取り組む意義を説いたところで、さっそく行動規範を変えようと考える教師はさほどいないであろう」

■ 「授業研究の制度化は、衰退しつつある授業研究を再活性化させるためのカンフル剤としては機能するものの、それだけでは形骸化した授業研究が蔓延する可能性もある」

  日本の教員が従来きずいてきていた、世界的にも優れた、それこそ自主的で自律的な授業研究の文化を、上からの管理や統制、命令や処分で衰退させてきたのは他ならない文科省や教育委員会の側ではないかが問われています。

府教委、市教委は今後の新研修制度の具体化、運営に当たり、20年前のこの文科省研究者の警鐘に真摯に耳を傾けることが求められます。

新たな研修制度に関する要請書 2023年3月17日

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